諺で自分を磨く

私たちは、仲間から信頼される「仕事の達人」をめざして、自分を磨いています。
日本の諺には、長年の日本人の経験と知恵が入っています。
この諺に、自分なりの思い・人生観を込めながら、自身を振り返り、将来の自己の成長に役立てていきましょう。

あ 青は、藍より出でて、藍より青し
藍の草から青を取るが、その色は元の藍よりも青い。
自ら努力して、大きく成長し将来、上長よりも活躍する。
そのことを上長も願っている。だから、自分を励ましながら、
5年後、10年後大いに活躍する姿を思い描く。
自分が育ったら、次には、自分の後輩をしっかり育てる。
先輩への恩は、後輩に返す。

い 石の上にも三年
やった事のない、難しいと思う仕事も辛抱が肝心。
しばらく努力すれば、好きになって、必ず自分のものになる。
置かれた場所で咲こう。でも、どうしても自分に合わないと思ったら、
周囲や親とも相談しながら、自分の感性を信じて決断・行動しよう。
無理をしすぎることはない。

う 上には上がある
職場や会社には見習うべき立派な先輩や人が、必ずいる。
そういう人を探そう。自分の師匠・自分の目標が見つかる。
一生勉強、一生成長。

え 縁の下の力持ち
陰で、日向で仲間を助け、支えてあげる人。こういう人が本当に信頼され、評価される。
職場で「あいつは仲間だ!」と言われる人は素晴らしい。評価は、実は、上長ではなく、
仲間がしていることにそのうち気付くだろう。無私の精神、陰徳陽報。

お 思い立つ日が吉日
物事は思い立ったらすぐ実行。スピードは、仕事の大切な基本動作。
但し、勝手に一人で始めない。上長・仲間を巻き込んで議論しよう。
日立の「和」の精神、つまり、職位の上下に関係なく、大いに議論するが、
ひとたび結論が出されれば、皆でその目標に向かって邁進しよう。

か 隗(かい)より始めよ
まず言い出した人、自分自身から先に始めよう。有言実行。
問題点の指摘はするが、自ら行動に移さない評論家では、仕事の達人とは言えない。

き 木を見て森を見ず
細部にこだわりすぎて、全体を見失ってはいけない。まずは全体像をしっかりつかもう。
いきなり走り出すのではなく、しばらく足を止めて仕事を大きく捉え、構想する時間・場を持つ。
一歩上の職位の人ならどう考えるだろうかと想像してみる。自分の前工程、後工程に注目する。
製造・販売・サービス等ビジネスの流れ全体を理解し、発想する。そうすると、良い仕事ができる。

く 君子危うきに近寄らず
コンプライアンス(法令遵守)は仕事の大前提。自分の背中には日立マークがついている。
自分は世の中から見られている存在。だから、自らの言動を自らが、しっかりコントロールしよう(自律)
基本と正道、損得より善悪。これが日立の基本哲学。

け 怪我の功名
「しまった!失敗だ」と思ったことが、思いがけず良い結果を招くことがある。
「なぜ、なぜ」を繰り返す。諦めない。腐らない。失敗から学ぶことは沢山ある。
そう思って前向きに取り組んでいると、いつか神様が微笑んでくれるかもしれない。

こ 転ばぬ先の杖(つえ)
段取り・事前準備をしっかりしよう。まずは期限を確認して、デッドライン(締切)から日程を引くことから始める。早めに周りに説明、相談して、不備を補う。必ず見落としがあると思え。準備上手は、仕事上手。

さ 三人寄れば文殊の知恵
「人を頼って仕事をするな。一人で何でもできると思うな」。プロとしての意地を持って、
自分の力で頑張る気概は大切。でも自分ひとりだけでは、仕事はできない。職場の仲間と
相談をしながら、チームとして良い知恵・成果を出そう。知恵は、仲間の知識と経験の総和から生まれる。自分をオープンにして、仲間を巻き込んでこそ、良い知恵が出る。

し 親しき仲にも礼儀あり
朝と帰りの挨拶、「おはよう」「お先に失礼します」。感謝のお礼「ありがとう」。
黙っていては、相手には伝わらない。自分の心をセリフで表現する。挨拶は、自分自身に
向かって言っていると思うと、もっとさわやかで、元気な声が出る。

す 好きこそものの上手なれ
自分を好きになる。製品、職場の仲間を好きになる。会社・事業を好きになる。そうすれば、自分に自信がついて、どんな仕事も怖くない。「私は食わず嫌いだから」という人もいるかもしれない。大丈夫!こだわらないで、まずはやってみよう。何でもできるようになる。

せ 千里の道も一歩から
構想は大きく描く。でもあれこれ課題を積み上げすぎると、却って手を付けにくくなる。日々の仕事は、できるだけ小さく砕きながら進めていこう。そうすれば、着実に成果を上げて
いける。そう、目標は大きく描き、課題は小さく砕く。

そ 袖振り合うも他生の縁
人との出会いを大切に。「この人とは、前世から繋がっている。」そんな縁を感じて偶然を
将来の自分の幸運に変えていこう。Luck is no accident.(幸運は偶然ではない)その為にも第一歩の行動・セリフが大切。自分から名刺を出して挨拶する。
自分から声を掛ける。「面白そうですね、少しお話を聞かせていただいてもいいでしょうか」。そう、待たずに一歩踏み出す小さな勇気を持とう。

た 短気は損気
頭にきても、一回はぐっと飲み込む。辛抱、辛抱!部下や後輩には、できるだけ冷静に叱ったほうがいい。でも我慢しすぎないこと。言うべきことはしっかり伝えよう。相手も納得、自分もすっきり。アサーションのスキルを磨こう。

ち 塵(ちり)も積もれば山となる
継続は力なり。少しずつでも意識して学びを続けていけば、その道のプロになれる。  
意識して、毎日20分の自己啓発。「忙しい、忘れた」と言わずに、自己責任で1日20分を
作り出す。「忙」も「忘」も心を亡くすと書く。なくしてはいけない。

つ 鶴の一声
日立精神「和を以て貴しと為す」。職場で大いに議論をし、職位の高低に拘わらず、自分の
意見はしっかり言う。でも、最後はリーダーの鶴の一声。決まったことに対しては、一致
団結して頑張ろう。これが日立のチームワーク。
  
て 鉄は熱いうちに打て
入社してからの3年間で人は大きく育つ。体で仕事を覚えよう。先輩は、遠慮しないで、
後輩に躾・基本動作・ルールを叩き込もう。そうすれば、後は自分で自分を育てていける。

と 時は金なり
  仕事管理は時間管理。意思決定を早くすればそれだけ、仕事の成果は大きくなる。
準備・検証する余裕もできる。時間を意識して「やること」・「やらないこと」を決断する。
上長と早めに相談しよう。

な 習うより慣れよ
本やテレビで学ぶ以上に自分で直接経験していく方がもっと効果的。三現主義(現場・現物・現実)で自分を育てよう。足で仕事をする。外に出て、外で人に会う。職場の机の上で学ぶ
以上に、確実に記憶に残る。

に 人間(にんげん)到る処(ところ)、青山あり
人間の骨を埋める墓地は、天下・地球のどこにでもある。心の中では故郷を思いつつ、国内外、グローバルに活躍しよう。住めば都。行った土地を好きになり、歴史や文化も学ぶ。
すると精神的な楽しみや充実感も湧いてくる。

ぬ 糠に釘
自分を叱ってくれる人を大切に。何も言ってくれなくなるのが一番不安。その為にも先輩のアドバイスにはしっかり反応して、自分が分かっていること、分かっていないことを伝えていくことが大切。間違っても「あいつは、教え甲斐がない。「糠に釘だ」などと思われない
ように。

ね 寝る子は育つ
1日最低7時間の睡眠と早寝早起きで、毎日の生活のリズムをしっかり作ろう。
睡眠は、心身の健康だけでなく、記憶の整理やアイデアの創出にも大きく関与している。
朝一番は考える時間に適している。間違いなく、朝の食事と睡眠は大切。

の 喉元過ぎれば熱さを忘れる
嫌なこと、苦しかったこと、恨んだことは忘れる。でもその時の失敗、助けてもらった恩は忘れない。失敗を失敗として逃げずに受け止めれば、必ず将来に活かせる。後悔はしない。でも反省はしっかりしよう。

は 話し上手より聞き上手
聞くには辛抱がいる。相手が「聴いてもらった」と思うとお互いに信頼が生まれる。コーチングの基本は、2割話して8割聴くこと。この割合を頭において、話をしよう。もう一度、
確認。そう、聴くには辛抱が必要。

ひ 人の振り見て我が振り直せ
他山の石(他人の良くない言行を見て、自分の人格を磨くのに役立てる)。自分を知ろうと
思ったら、他人の中に入って観察してみよう。自分の振舞いを改めるネタを見つけることができる。ウマが合わない上長、怒りっぽい先輩、説教好きな顧客を観察してみよう。何か
自分に共通するものを発見できる。そう、自分探しは、他人探し。

ふ 踏まれた麦は強くなる
誰しも辛いこと、嫌なことは避けたい。今までやったことが無い、されたことが無いと、
つい「理不尽だな」と思う。でも後から振り返ると、そういう経験が自分を強くし、育ててくれていることに気づく。仕方がない。そう思って、今日のところは辛抱してみるか。

へ 屁をひって尻つぼめる
あまり上品な表現ではないが、失敗した後、取り繕ってごまかそうとすること。
韓非子の言葉に「巧詐、拙誠に如かず(こうさ、せっせいに、しかず)」というのがある。
「失敗しても、巧みに誤魔化そうとするな。拙くても誠を尽くすことが大切だ」という意味。誰しも失敗を隠そうと思う。まさに自分との戦い、永遠のテーマ。
つらいが、意識することで、一歩ずつ勇気ある行動に近づける。

ほ 仏の顔も三度
「温和で慈悲深い人でも、たびたび我慢できないことが繰り返されれば、最後には怒り出す」という意味。これを自分に当てはめてみよう。では、これを反対に読んで、自分は三度までは、他人の言動に我慢してみよう。もしそうできれば、将来立派なリーダーになれる。

ま 蒔(ま)かぬ種は生えぬ
原因がなければ結果は無いという意味。「因果具時(いんがぐじ)」という言葉がある。原因と結果は一致する、原因があるから結果があるという仏教の教え。自分が相手に真心で接
するから、相手も自分のことを信頼する。従って成功しようと思ったら、相手に何かを期待するのではなく、原因となる行動をまず自分から起こしていこう。

み 水は方円の器に随う(したがう)
水は容器の形によって四角にも、丸くもなる。人は、環境や人間関係に感化され善くも悪くもなる。朱に交われば赤くなる。人は善悪の友に依る。自分を正しく律することを意識し、良い仲間と付き合おう。

む 無理が通れば道理引っ込む
筋道に合わないことが通ると、物事は正しく行われなくなる。ところで、自分は部下や周囲に無理を言っていないか。まずはよく聞いてあげることがスタート。もし若い時に「道理が引っ込むような無理」を感じた人は、その人を反面教師(悪い見本)としよう。自分がリーダーになったら、絶対そうはしないと思うはず。でも、またこれが難しい。

め 目の上の瘤(こぶ)
目障りで邪魔なものの例え(特に上長に対して)。嫌だなあと思う。でも、実際は案外相手を見ていないことがある。文句を言うわりには、相手のことを知らないし、理解していない。もしかして、食わず嫌い、毛嫌いしているだけかも。だから、「嫌だなあ」と思ったら、相手をよく観察してみよう。すると、段々と相手の短所が正しく分かってくる。そして長所も。

も 餅は餅屋
物事はそれぞれの専門家に任せるのが良いという意味。工場・事務所のそれぞれの職場や
分野には、経験と知識を持った素晴らしいプロの人がいる。自分の能力だけで解決しようとしないで、周りの達人の能力も借りながら良い仕事をしよう。「自分が知らないこともある」ことが分かっている人は、謙虚になれるし、一歩上の仕事が出来る。「こうあるべきだが、この中で自分にできる事はこれ。ここは自分だけではできない。」と全体像の中での自分の位置づけを意識できる人は、仕事の達人。

や 安物買いの銭失い
安いものを買って得をしたような気になっても、結局は損になる。ものを買う時には、数社に相見積もりを出して、一番安いものを選ぶのが基本。しかし、価格だけではない。品質・使用する期間・目的など総合的に判断することも大切。それがそもそもどのくらいの価値があるか、自分で原価計算してみる気概も持とう。やれば出来る。そして、上長・仲間とも
しっかり議論し、相手ともひるまず折衝しながら、良い買い物をしよう。

ゆ 油断大敵
気持ちのゆるみや不注意は、失敗や事故の原因となる。特に安全に油断は禁物。機械に挟まれ、巻き込まれたら、瞬時に大怪我をする。この恐ろしさに気づかない。だから、「怪我を
するな」と注意するだけでなく、「どういう不安全行為をしたら怪我をするのか?事故になったら、自分の身体はどうなるのか?」という観点からも、厳しく教えることが肝要。何故なら、安全は、「命」に関わるもので、やり直しがきかないから。

よ 葦(よし)の髄から天井を見る
自分の狭い見識で、広い世界のことについて勝手な判断を下すこと。葦の髄というのは、
言うなれば、ストローのこと。ストローを覗いて、天井を見ようとしている光景を思い浮かべてみよう。井の中の蛙、大海を知らず。「自分の知らないもっと大きな世界があるんだ。」ということを意識しよう。自分を守りから攻めの姿勢に変えよう。そうすれば、もう一歩前に踏み出せるはず。

ら 来年のことを言えば鬼が笑う
あまり先のことを心配して、あれこれ言っても仕方がない。リスクや考えられる課題を想定し、リストアップすることは大切な仕事。でも無用の心配をしすぎるのはストレスが溜まるばかりで生産的ではない。杞憂は止めよう。そう、悲観は気分、楽観は意思。意識して、
明るく元気に振る舞うことはリーダーの大切な要件。

り 綸言汗の如し
綸言(りんげん)とは、「天子の言葉」の意。天子が一度口にした言葉は、汗と同じで引っ込めることができない、即ち取り消せない。言葉の重みが大切になる場面が、ビジネスでも
必ず出てくる。心しておこう。

る 類は友を呼ぶ
似た者同士が自然に寄り集まること。学生時代からの友人、会社の同期を大切にしよう。
但し、今はグローバル・ダイバーシティの時代でもある。自分と異なる才能、資質を持っている人と積極的に付き合って、自分を磨き、さらには変えていく気概も持とう。

れ 礼は往来を貴ぶ(たっとぶ)
礼を受ければ礼を返す。お世話になったらお返しをする。手紙・メールをもらったら返事を出す。恩義は忘れない。自分が相手を訪問すると、相手も訪問してくれる。
礼は、人間関係の基本動作。

ろ 論語読みの論語知らず
書物の知識・情報は沢山あっても、実行ができないと意味は無い。ただ知っているだけでは価値が無い。問題点を書類に纏めるだけでも不十分。実行こそが本来の仕事。日立は野武士、有言実行、開拓者精神。これらの言葉すべてに「行動」というキーワードが隠れている。

わ 笑う門には福来たる
職場の仲間同士仲よく親しんで、楽しく仕事をしよう。時には笑い声も大いに結構。  
自然と職場も明るくなり、幸せな気分になる。すると良いアイデアも沢山出る。
「明るく、元気で、前向きに」。シンプルだが、行うのは難しい。さあ、頑張ろう。