三年前、会報426号に先代の山崎校長が「マルチ商法に巻き込まれない」との記事を掲載され同窓会のメンバーへの注意喚起をいただきました。しかし、ほとぼりが冷める時期を狙ってか残念ながら20歳代前半を中心とする若手日専校卒業生の間で再び「マルチ商法」に関与した強引な勧誘が再燃しています。外貨為替取引の売買システムや生活情報支援サービスを受ける会員といった普段かかわることも少ないであろうシステム購入や入会を日専校在学時の運動部の先輩・後輩などを通じて強い勧誘が行われている状況です。近時、国民生活センターなどから若者に広がるマルチ取引への注意喚起も発信されており、トラブルとして表面化された昨年度1万1千件(まさに氷山の一角です)の内、45%が20歳代という状況と報じています。近年、副業・兼業が推奨され、更に新型コロナウィルス感染拡大による生産調整や在宅勤務などで出社する時間が少ない環境も何等か影響しているのではないかと推測しています。

皆さん、車の購入やスポーツクラブへの入会の際はその機能やデザインや利用方法などから検討し自ら納得したうえで購入・入会していると思います。外貨為替に関心があるのならまず基礎知識を学ぶのが先で、70万もの高額なシステムを購入する前に行うべき準備はあるはずです。また自慢の愛車や利用しやすいクラブなら友人に勧めることもできると思いますが、そうでない受け売りの情報だけで友人や後輩に強く勧めることはとてもできないと思います。ましてや、自分が利用する意思のないものやサービスを他人に勧め購入/入会させることなど、いくら講習やマニュアルで学んだとしても困難かと思います。更にそうした勧誘を繰り返し成約報酬のマージンで利益を得るといったビジネスが成立するのか、考えてみてください。誰かが泣き寝入りすればいいといった行為の連鎖に加担しないでください。先輩などから強く勧められて断れない、という状況もあるかと思います。日専校の伝統でもある強い先輩・後輩・同期の繋がり(絆)から一度くらいは付き合わざるを得ない、といった思いもあるかもしれません。しかしながら金銭にまつわる付き合いは逆にこの繋がりを破壊するものと理解してください。断りづらいからといって付き合ってしまえば、次に声をかけられたときに「又か」と警戒することになってしまうでしょう。付き合って購入しその場をやり過ごしても、勇気をもって断ってもかつての様な人間関係は保てないのであれれば、最初の勧誘の際にしっかり断るべきです。反対に後輩や友人に勧誘を行えば、更に勧めた後輩や友人とも交流が疎遠になってしまいます。随分昔の話になってしまいますが、私も20代の頃(かなり初期の「マルチ商法」ですね)に中学時の友人から勧誘を受けたことがありました。勧められたものの利用価値を理解できないことから断りその後連絡があっても、取り合わないことにしました。その友人とはその時期以降同窓会などでも一度も姿を見たことがありません。強い勧誘を受ける状況であれば、一人で悩まず周囲の友人や職場の先輩に相談してください。自分だけが強い勧誘を受けているのではないといった状況もわかるでしょうし、時期は異なってもはっきりと断っている人たちがいる、断らないと更に悩みを深めることになる、といった状況を理解できると思います。とりあえず生返事ではなく勇気をもってしっかりと断る対応してください。   上野 久充

 

勧誘を受け、更に勧誘をする立場になるかもしれない方へのメッセージを書かせていただきましたが、最後に職場の先輩方へのお願いです。悪質なマルチ商法に関しては「モノなしマルチ商法」など時勢に合わせ対象となる商品が次々と変化していますが、新しく経済的に自立を開始した20歳代前半(親権者の取り消し権がなくなった成人後)をターゲットに繰り返され、この交友関係に侵食する構造は変わっていません。まだ学生時代の親交を色濃く残し、この繋がりを活かして社会人として成長する時期に人間関係を遮断させてしてしまう、質の悪さを感じざるを得ません。半面、冒頭の報告資料では30歳台以降はマルチ商法のトラブルに至るケースは激減しています。一概には言えませんが、社会人としての経験を積んだ先輩たちはリスクを把握し回避しうることが要因にあるものと思います。

職場内でも顔を合わせてのミーティングや世間話をする時間も減り、更にはマスク越しに表情を覗うことも難しい時節となってしまっていますが、日頃からの声掛けや、相談されやすい雰囲気を作り、後輩たちがマルチ商法に巻き込まれる気配があれば、人間関係を壊しながら一時の自己の利益を追求する行為など、明らかに間違っているということを是非とも伝えていただきたいと考えています。何卒、よろしくお願いします。